#雪

## 雪という、静けさの手紙

朝、窓を開けると、世界が白く染まっていた。音が吸い込まれ、空気が澄み渡り、すべてが静かに整っている。雪が降ると、時間がゆっくりと流れ始める。まるで、自然が差し出す静けさの手紙のようだ。

岐阜の冬は、雪とともに訪れる。山々は白く覆われ、川の音も遠くなる。田畑は眠りにつき、木々はその枝にそっと雪を乗せる。その風景は、ただ寒いだけではなく、どこかあたたかい。雪がすべてを包み込み、過去も現在も、静かにひとつにしてくれる。

雪には、記憶を呼び起こす力がある。幼い頃、祖母と囲炉裏の前で食べた焼き餅の香り。雪かきのあとに飲んだ甘酒のぬくもり。誰かと歩いた雪道の足跡。それらは、雪の中にそっと埋もれていて、ふとした瞬間に心に浮かび上がる。

雪はまた、余白をつくる。色も音も消えた世界の中で、心は自由になる。何もないからこそ、何かが見えてくる。言葉にならない思い、忘れていた感情、そしてこれからの願い——それらが、雪の静けさの中で形を成していく。

そして雪は、浄化でもある。すべてを覆い隠し、すべてを新しくする。昨日の悲しみも、今日の迷いも、雪の中でそっと溶けていく。新しい朝が来るころには、世界は少しだけやさしくなっている。

今日もまた、雪が降る。それは、自然からの贈り物であり、心を整えるための静かな時間。雪の中に立ち、耳を澄ませば、きっと何かが聞こえてくる。それは、過去から未来へと続く、静かな祈りのようなもの。

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