## 昼と夜の均衡 ― 秋分の日に寄せて
川面に映る夕陽が、ゆっくりと山の端に沈んでいく。空は橙から藍へと移ろい、風は少し冷たく、すすきの穂が揺れている。岐阜の秋は、静かに、しかし確かに季節の境界線を越えていく。
秋分の日。昼と夜の長さがほぼ等しくなるこの瞬間は、自然がひとつの均衡点に立つときでもある。光と影、温もりと冷たさ、目覚めと眠り。そのどれもが、互いを否定せず、ただ静かに共存している。
この均衡は、私たちの内側にも響いてくる。忙しさの中にある静けさ、喧騒の中にある孤独、希望の中にある不安。人の心もまた、昼と夜のように揺れながら、ひとつの調和を探しているのかもしれない。
岐阜の清流沿いを歩くと、朝と夜の境目に立つ瞬間がある。霧が晴れ、鳥が鳴き、遠くの山々が輪郭を取り戻す。そんなとき、私は「均衡」という言葉の意味を、風の中に感じる。
それは、完璧な静止ではなく、絶え間ない揺らぎの中にある美しさ。昼が夜に寄り添い、夜が昼を受け入れるように、私たちもまた、自分の中の光と影を抱きしめながら、生きている。
秋分の日。自然が語りかけてくるこの瞬間に、ほんの少しだけ立ち止まってみよう。空を見上げ、風を感じ、心の中の昼と夜に耳を澄ませてみる。
そこにはきっと、言葉にならない静かな調和がある。
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