## 巡るということ
朝、山の端に光が差し込むと、季節がまた一歩進んだことを感じる。風の匂いが変わり、木々の葉が色づき始める。自然は、静かに、しかし確かに「巡って」いる。
「巡る」という言葉には、ただ回るだけではない、深い意味がある。それは、時間が円を描くように流れ、過去と現在、そして未来が静かにつながっていく感覚。岐阜の里山では、四季が巡るたびに、風景が少しずつ表情を変えていく。春の芽吹き、夏の蝉時雨、秋の稲穂、冬の雪。それらはすべて、巡りの中にある命のリズムだ。
人の心もまた、巡っている。忘れたと思っていた記憶が、ある香りや音によってふと蘇ることがある。誰かとの出会いが、別れを経て、また新たなつながりを生むこともある。巡ることで、私たちは変わり、そして戻ってくる。少し違う形で、でも確かに同じ場所へ。
「巡る」は、旅にも似ている。歩いた道、見た景色、交わした言葉。それらは一度通り過ぎても、心の中で何度も巡ってくる。岐阜の川沿いを歩いていると、そんな感覚に包まれる。水が流れ、光が揺れ、時間が静かに巡っていく。
そして、「巡る」は、再生の兆しでもある。冬の終わりに春が訪れるように、悲しみのあとに希望が芽吹くように。巡ることで、世界は新しくなり、私たちもまた、少しずつ前へ進んでいける。
今日という日も、何かが巡っている。風景も、感情も、記憶も。その流れの中に身を置きながら、静かに耳を澄ませてみよう。きっと、心の奥で何かがそっと動き出している。
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